不妊症について

体外受精・胚移植
  卵巣で形成された成熟卵胞から卵子を体外へ取り出し(採卵)、精子と受精させ(媒精)、さらに数日間育てて(培養)得られた受精卵を、体内に移植(胚移植)する治療法です。この方法以外の医療行為によって妊娠成立の見込みが少ないと判断されるもの(卵管因子、男性因子、免疫性因子、原因不明)を対象とします。
  1978年に最初の体外受精による赤ちゃんが生まれて、今年その子にも子供が生まれ、次世代への安全性も確認されはじめ、現在ではわが国でも年間1万人以上の赤ちゃんが体外受精・胚移植にかかわる治療で誕生しています。
  治療の成功のためには、実際の流れ1.卵巣刺激、2.採卵および採精、3.媒精および受精卵培養、4.胚移植、5.黄体刺激のすべてがうまくいかなければなりません。
  その中でも特に大事に考えている卵巣刺激と胚移植を中心に説明します。
  10年以上この治療を専門として行ってきたうえで、現在主流で行われている刺激周期による卵巣刺激の限界を強く感じていました。また妊娠成立における胚移植の重要性も早くより指摘し、理想の方法を模索してきました。
体外受精-胚移植の流れ 1.卵巣刺激

2.採卵

3.媒精 培養

4.胚移植

5.黄体期管理
卵巣刺激
  現在主流に行われている刺激周期採卵法は、予定される時間に採卵ができるということ、多くの卵がとれる可能性があることという二つの長所のために世界的に広がりました。 実際に施行してゆくと、予定される時間に採卵できる長所はあるものの、反応性が悪いかたは一つも卵ができない人もいること。 一回治療を行うとその後数ヶ月治療ができないこと。 とれる卵の質が必ずしもよくないこと。繰り返し治療をおこなううちに必ず反応不良になってゆくことが分かりました。 妊娠成立するためには良好卵が一つあれば十分と不妊症の専門医はみなそう思っておられると思います。 自然周期ではある周期に用意された数十個の卵のうち赤ちゃんになるのにもっともよい卵を選んで排卵させ、そうでない残りの卵を死滅させるしくみをもっています。 内服薬と排卵誘発剤の使用を最低限に抑えることで自然周期に用意される卵を採取することが可能となりました。 (自然周期採卵法 friendly ART)。自然周期採卵法はやはりとれる卵の個数が平均で1~3個と少ないことが欠点です。 下垂体性の無排卵症の方など刺激周期を採用しなければ採卵できない方もおられます。
  当院ではより質の高い卵を採取できる自然周期採卵法を中心に施行しながらも患者さんの状態に合わせて治療をアレンジします。 刺激周期にて妊娠成立されなかった方、反応性が悪い方、年齢の高い方、にはぜひ考えていただきたい方法と思います。
  セカンドオピニオンとしてもご相談下さい。
採卵、受精卵培養
  経膣超音波ガイド下に卵胞を穿刺し、卵子を採取します。穿刺針はかなり細いものを使用していますので 痛みも少ないうえに副作用もほとんどありません。 通常の2~3日目胚までの培養の他に、5~6日培養して、子宮に着床する直前の状態まで到達させる事も行っています。
胚移植
胚移植の当院の方法  大切にあずかったとってもちっちゃな赤ちゃんをお母さんのからだにお返しする。 これが胚移植と思ってきました。子宮の中にならどこでもよいのではなく現在ではもっとも着床しやすい場所が特定されてきました。 腹壁からの超音波を用いておこなうようになり妊娠率は上昇しましたが、子宮が後ろを向いているときや尿のたまり方が少ないときは観察ができませんでした。 現在では経膣式の超音波を用いて、ピンスポットに子宮内に戻す方法を選択しています。 子宮の入り口(経管)の形はさまざまで非常に子宮内に到達しにくい方もいます。 その場合には経筋層的内膜到達法(TOWAKO 法)を選択するようにしています。 胚移植のときに出血があったり、痛みが伴ったり、時間がかかったりしていまだに妊娠が成立しない方に、本当にいままでの胚移植があなたにあっていたかを考えていただきたいと思います。 セカンドオピニオンとしてもご相談下さい。
  胚移植後の安静は、妊娠成立とは関係がないという報告が多く見られます。15分の診察台での安静とその後一時間のベッド上の安静をお願いしています。
1)経膣超音波下ピンスポット子宮内胚移植法
  子宮頚管よりカテーテルを挿入して移植を行います。当院では、経膣超音波ガイド下に行なう事により、より至適な位置に胚(胚盤胞)を移植する事が可能です。 ほとんどすべての場合に適用されますが、時にカテーテルが挿入しづらい(できない)ことがあります。 その場合以下のトワコ法を選択します。
2)トワコ法[The Towako method](Transvaginal-transmyometrial embryo transfer)
  経膣超音波ガイド下に特製の胚移植用カテーテル(トワコウ針)を子宮内膜にめがけて穿刺し、胚移植を行います。 超音波で子宮の内膜が見え、針を刺す方向に障害物が無ければこの方法が 適用できます。
胚盤胞移植
  自然妊娠では、卵管のなかで受精卵は分裂を繰り返しながら移動し、子宮に到達して胚盤胞の状態で着床します。 胚盤胞培養液の開発により、卵管内に近い培養環境を実現することが可能となり、体外にて胚盤胞まで培養できるようになりました。 胚盤胞まで発育した良好卵を移植できるため着床率が高いのが特徴です。 初期胚の場合は良好卵にみえても途中で発育が停止する場合もあり、胚盤胞まで発育することは良好卵を選別することにもなります。
胚盤胞移植
長所
  初期胚とちがい、着床の準備が整った受精後5~6日目の時期に胚盤胞を子宮内に移植することは生理的であり、着床だけが問題となります。これが高い妊娠率につながります。
  初期胚で良好でも途中で発育が停止することがあります。
  そのため移植数を少なく抑えることが可能で多胎妊娠が予防可能です。また初期胚との組み合わせで2段階胚移植法も反復不成功例に有用とされています。
短所
  受精卵のうち胚盤胞に到達できる割合は40%前後にとどまるため、受精卵が少ない場合には移植がキャンセルとなるリスクがあります。胚盤胞への到達率の低さから判断してもまだ改良の余地があり、妊娠の可能性を持っている受精卵が、長期培養によって途中で淘汰され、妊娠の機会を逃していると考えられるケースがあります。
  胚盤胞移植により、一卵性双胎の発生が増えるといわれています。一卵性双胎は二卵性双胎にくらべて妊娠に関する危険性が増えます。
当院の方針
  以上の長所短所を踏まえ現時点での当院の方針は、
1. 初回の体外受精(顕微授精)では初期胚移植を行う。
移植後の余剰胚については全て追加培養を行い、胚盤胞に達した場合は凍結保存を行う。
2. 初回で妊娠しない場合、二回目以降については、胚盤胞移植を検討する。
最初から胚盤胞移植を検討する場合、
1. 卵管性の不妊症の場合、子宮外妊娠の既往や卵管水腫がある場合
2. 何らかの理由で初期胚移植がキャンセルとなり、凍結保存となった場合
3. 原因不明の習慣性流産に対し、胚の選別を行う場合